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香道ではどうして「香りを聞く」というのか

koudou

香道にはアロマ(精油)とはまた違った日本ならではの奥ゆかしさを感じます。

室町時代に確立された香道ですが、平安時代には貴族を中心に
源氏香という香あての遊びが主流となり、鎌倉時代に入ると武家、
江戸時代に入ると庶民にまで文化が広がり、今や日本では100円ショップでも売られ
品質に差はあるものの、日常で個人が自由に愉しむ領域になりました。

なお、香道の世界では香りを聞くといいます。
言葉の表現1つにもこだわりがあります。
さて、どうして香りを聞くというのでしょうか?

嗅ぐというのは、本来動物がもっている五感の嗅覚で感じるものですが、
人間が感じる香りはそこに個人の価値観であったり精神性が加わる
特有なものだからこそ、香りを心で聞くというのだそうです。

なお、香道で使う香木とは、生木そのものに香りがあるものと、
東南アジアの島々で地中に埋もれた樹木が数千年を経て、
芳香を持つようになったものがあり、
自然が生み出した大変貴重なものとのことで数に限りがあり、
最も貴重といわれているのは伽羅という香木です。

資源に限りがあるゆえに、日本3大文化として香道は発展しずらい側面があり
書道・華道・茶道が御三家といわれています。

さて、この道の精神とは何でしょうか?
道がつくものの共通点として、
個人がそれぞれの道を通し
心の道しるべをみいだすことのように思います。

心の道を心で聞くというのは日本人ならではの崇高な精神性の高さを感じます。

また、香木は心身の浄化やリラックスをはじめ、健胃、強壮、利尿、解毒に
効用があるといわれています。

しかし、元来は東南アジアから漂流してきたこの香木を仏像として彫っていた先人は
このような健康の効用を主目的してつくっておりません。

結果、このような薬理効用があるとわかったのはなんと300年も経てからのこと・・・。

効用を先走る現代に失われつつある感性があるように私には感じます。

おそらく、先人たちは効用を先走りしなくても鋭い感受性の奥深さゆえ
真に残る価値を重視していたように思います。

香木の活用を効用ではなく、心の救いであったり、遊びの精神性であったり
そういった目に見えずらい価値に趣きをおいていたのではないでしょうか。

だからこそ、香道の世界はたとえ資源に限りがあったとしても室町時代からの時を経て、
人の心に語り継がれるものだと思います。

人の命も、残念ながら限りがあります。
私も香道と同様に目に見えずらい価値に趣きをおき
人の心に希望をもたらすことができれば光栄です。

文:大前美翔